せん妄の治療
せん妄は、幻覚や錯覚が見られるような意識障害のことで、健康な人でも寝ている人を強引に起こすと同じ症状を起こします。
意識障害というと昏睡のようにぐったりと動かなくなって呼びかけても反応がない状態を想像しますが、せん妄のように興奮したり幻覚が出たりすることもあります。
せん妄の種類はいろいろとありますが、現在、確実にせん妄を治す治療法はないそうで、せん妄の治療には通常は対症療法が行われます。
- 夜間せん妄・・・脳血管障害や血管性認知症、
アルツハイマー病などで、昼間は症状がなく夕方から夜にかけてせん妄が出現する。 - 術後せん妄・・・術後しばらくしてから、急にしゃべりだしたり、
動き回ってベッドから降りようとしたり点滴を抜いたりする。 - アルコールせん妄・・・アルコール依存症の人が病気などで急に断酒した後、
2~3日して激しい興奮状態になること。 - 薬剤性せん妄・・・薬を飲み始めてから精神状態が不安定になること。
せん妄の原因はいろいろとあり、身体の不調、薬剤によるもの、環境の関与、心理的な要因など、特に高齢者はせん妄になりやすいようです。
注意しなければならないのが、高齢者のせん妄は症状がアルツハイマー病などの認知症と似ているところがあること、認知症にせん妄が合併することがあることです。
せん妄と認知症は本質的には異なるもので、認知症に比べて、せん妄は治療可能なことが多いので、せん妄の治療において、せん妄と認知症を鑑別することはひじょうに重要です。
せん妄の治療の基本は原因の究明とその除去ですが、せん妄の疑いがあればまず日頃飲んでいる薬をチェックし、血液検査、放射線検査などで身体の状態を調べたりします。また、最近になって心理的ストレスとなるような出来事がなかったかどうかなども確認します。
原因が特定できれば、原因を除去することにより、せん妄の治療が可能です。多くの場合、せん妄は治癒しますが、治療が遅れたり、発見や治療に手間取ると脳に障害が残り、慢性化することがあるので、早期発見、早期治療が何よりも重要です。
コラム: