認知症の方への効果と限界
光療法の効果は、人によって異なるようですが、様々な文献から認知症患者の大まかに50%~70%程度の方に効果が現れるようです。効果の程度も、著効からやや効果有りまで様々なようです。
また、睡眠と覚醒のリズムが確立して良質な睡眠が得られるようになると、脳の休息・修復が促進され精神的に安定してくるため、睡眠以外に良い影響がでることが報告されています。
文献やモニター結果によると、認知症の様々な周辺症状が改善することが報告されています。下記の項目は、実際にモニターを実施していく中で報告された症状の改善例です。
- せん妄が改善、または消えた。
- 表情に笑顔が多くなり、正常な会話が戻った。
- 落ち着きを取り戻し、同じことを何度も言わなくなった。
- テレビがわかるようになった。
- 午後に排尿量が増え、夜間の排尿・排尿頻度が減った。
認知症の様々な周辺症状が改善することが報告されています
認知症に対する光療法の限界
光療法が認知症の方の睡眠と覚醒のリズムを整えることにより、睡眠以外にも良い影響があることを述べました。しかし、光療法は太陽に代わって生体リズム全体を整える働きをしても、認知症そのものを治療する効果はありません。この点は誤解されないようにしてください。
また、若い方の場合、光療法で昼夜逆転が治って生活習慣を健全に保つとそのまま良好な睡眠と覚醒のリズムを維持できる方がほとんどです(例外有)。
しかし、認知症の方の場合は、光療法を中止すると生体リズムが崩れた状態に戻ってしまう場合が多く、継続的に光療法を実施する必要があることが報告されています。
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光療法の効果が現れても、一時的に元の不調な状態に戻ることが多く、一気に安定するわけではありません。この過程を何度も繰り返し、数ヶ月かけて心身全体が安定化の方向に向かう場合が一般的です。
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さらに、比較的安定した後でも、認知症の方の場合は光療法でなんとか生体リズムのバランスを保っている場合が多く、光療法だけで安定した状態を十分に維持できるとは限りません。したがって、光療法以外に昼間に心身を活性化する活動との相乗効果を狙うことが有効です。
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認知症の症状の背景には脳の機能的な障害や衰弱があり、その結果、生体リズムの乱れとなって現れています。生体リズムを構成する中枢機構自体(体内時計)の機能的な障害・衰弱症状がかなり進展している場合もあり、光療法の効果が得られない場合もあります。
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高齢・認知症の方の場合、体力的に座位を確保して光を浴びることが難しい場合や、眩しさを嫌う人への対応が難しい場合があります。